風立ちぬ
公開されたのが昨年でしたっけ?話題になってたなぁ
映画館に行きたかったのですが我が家はあいにくの子育て中、0歳児連れて映画館に行くわけにもいかなかったのでじっと我慢した映画でありました
今更ながら借りて見てなるほどと納得、こりゃジブリ映画を目当てに見にいったらとんでもなく裏切られたに違いない映画ですね
今更なのでネタバレも気にせず書きたいことを書きたいように
主人公を実在の人物に据えてさらに作品として成り立たせながらそこに宮﨑駿監督自身をオーバーラップですか
世の中の矛盾、自分自身の抱える矛盾を感じながらも飛行機(アニメ)製作がやりたいという情熱だけで突っ走るクリエイターの内面が恐ろしく出てますよね
特高に追われていて仕事が無い時は電報一つで名古屋から東京へ駆けつけるくせに、いざやりたい仕事が舞い込むと長野県の病院にお見舞いにすらいかずに熱中しちゃうというなんとも言いがたい集中力を発揮します
この集中力が至る所で演出されております、上司の話も妹との約束も集中力が発揮されていると無視でしたが、まさか大好きだと散々言ってた奥さん相手にも発揮されるとは
序盤の学生時代は正義感溢れる少年であったろう主人公が青年になるにつれて飛行機バカになって世の中の就職問題や銀行の取り付け騒ぎや子供が空腹である理由なんてのに興味をなくしていく様子も生々しいですね
菜穂子が惚れた王子様であっただろう少年時代、突然の地震で骨折した女中を背負って助けたあの正義感が大人になっていくにつれてどんどん消えて最後にはそのかけらも残ってませんよね
時代の流れは汽車や町並みの変化と共に主人公の心境もどんどん変えていくわけです
冒頭夢のシーンでピラミッドのある社会とない社会の選択肢が出てきますが、自己矛盾への挑戦という意味ではアニメは子供向けだと言い切って崖の上のポニョを作った監督とは思えないくらいに切れ味鋭かったですね
時間のないクソ忙しい時でも自宅で寝ている妻のために自宅に帰ってまで仕事を続ける様子は妹から見て信じられないわけだが、本人は至って努力をして一日一日を大切にしているつもりというのも大人向けですね
どちらもきっと正しいのでしょう、仕事を諦めて長野県で付き添えという妹も、やりたい仕事がある中で時間をやりくりしてなんとか朝と晩だけでも毎日顔を見たい見せたいと思う主人公の努力も
こういう善悪はっきりしない矛盾こそが見る立場ごとに変わるというステキな描き方ができるなんてやはりすごい監督ですね
最後に、関東大震災や第二次世界大戦を題材にしながらも画面上に一切人が死ぬシーンが描写されていないのはやはりジブリ映画ということで見に来るだろう子供を意識してのことでしょうか
主人公である堀越二郎氏も零戦は好きでなかったご様子で最後のシーンでも結局一機も戻って来なかったと言わせておりますが、主人公が好きだった物の共通点として美しく儚いというキーワードがあります、美しく儚い飛行機である零戦と美しく儚い女性である妻をリンクさせることでうまく人が死んでいく悲惨なシーンを書かないようにされていて、なるほどねと感心しました
とかくタバコとか軍靴の音とか余計な雑音の多かった作品ですが、本来であれば鯖をもっと食べようと騒ぐべき作品だったのかもしれませんね