機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズを見て
ガンダムAGEの時は毎回レビュー書いていたのにオルフェンズはなぜ書かないの?と聞かれました
理由は簡単、面白くて不満がないからです
冒頭、いきなり引き込まれる宇宙ネズミの主人公達の不遇から任侠的な話になり途中少しだけ中だるみっぽく感じるところもありましたが宇宙コロニーでの労働者との関わりとそして地球にたどり着いてからの暴走という流れでオルガとクーデリアの成長をしっかりと描いておりました
火星で宇宙ネズミと呼ばれて大人たちに裏切られて仕方なく、という感じで結成された鉄華団、この時はオルガも何をしていいかわからないままクーデリアを地球へ送り届けるということの意味すら名を挙げるためでした
クーデリアが一生懸命に三日月に話しかけるも空回りさせたりして、クーデリアの理想=火星の理想ではないのではないかと不安を駆り立てます
ともかく鉄華団は金と名のためだけにわがままで世間知らずなクーデリアお嬢様を地球に送り届けようとし、クーデリアに死んでもらった方がいいという勢力に追われて手詰まりになりすがりついた先がテイワズという任侠組織になるわけです
ここまでオルガ達が主体的に何かを決めたのは大人たちを追い出して自分達で鉄華団を作って独立してやるということだけで、実際にはクーデリアと同じく空回り中だったわけです
必死に空回りした結果、タービンアニキと心が通じてなんとかテイワズに入れてもらえたわけですが、タービンが追いつく理想形としてオルガは自分が背伸びしても勝てない相手だと繰り返し描画されるわけです
テイワズに入りタービンズの支援を受けながら中間目的地であるコロニーに辿り着くまでの間はオルガもクーデリアも三日月もアキヒロもタービンズのクルーに追いつけ追い越せで背伸びする時期ですが、物語の性格上どうしても起承転結でいう承の部分は中だるみしやすいのですが、戦闘少なめで丁寧にキャラクターを描いたことが効いてきます
それでもヒューマンデブリの物語などでしっかりとオルフェンズらしい悲しい物語を描いてましたよね
転の部分はコロニーにたどり着いて自分達が運んでいた荷物が武器だったことを知った辺りからです
オルガ達は武器を運ばされていたことに困惑し、クーデリアは信じきっていたフミタンに裏切られていたことに困惑し、主人公達に選択を突き付けるわけです
直前に三日月がクーデリアにキスをしたことでそれまで気になっていた三日月の存在が一気に近くなりどうすればいいのかと恋する少女になっていたのがフリで
この章の最後、フミタンを失い巻き込まれた労働争議で多数の死者が出た状況に置かれてクーデリアが急成長する辺りがとても素晴らしいですね
急成長したクーデリアは自分の使命を思い出し、迷うことなく地球を目指すために地球全土に向けてメッセージを送りカルタを釘付けにした時、三日月の方が逆にクーデリアに惚れてしまうというオチでクーデリアの成長を描いておりまして、なるほどなと思うんです
そして地球降下後はいよいよ怒涛の最後に向かうためのオルガの成長です
いろいろと主人公は三日月と書かれてはおりますが、三日月は最初から強くて精神的にもブレのない、つまり成長物語であるはずの作品であまり成長の余地はない人物なのでブレないナビゲーター役ですよね、オルガの苦悩や成長こそがこのオルフェンズの主題ですから主人公はオルガですよね
地上に降り立った鉄華団は目的を果たしたと思っていたのだがまだまだ困難な蒔苗の爺さんを送り届けるという仕事が発生する
もう前に進むしかないというオルガと、ついていけないというビスケットとの対立構図を引きずったまま敵との戦闘が始まるわけですが、死亡フラグビンビンのビスケットはオルガと今後についての話し合いをすることなく死んでしまうのです
今後のことについて進んだらいいのか引き返した方がいいのか、頼りにしていたビスケットを失って混乱しているオルガと、オルガが混乱しているのを知って不安になる鉄華団
思い悩んだ挙句、ビスケットを殺されたまま引き下がれないと徹底抗戦を宣言したオルガ、オルガにとっては三日月もまた一つのプレッシャーで、いつでも三日月にだけは負けたくないと思って突っ張ってきたわけで、この辺りの苦悩を描くために承パートの人間ドラマがとても生きてきますよね
迷いのないリーダーの徹底抗戦支持に沸き立つ鉄華団、不安だった子供たちが一気に目標を得て不安が吹き飛ぶ瞬間なのですが、それを見て冷静なメリビットさんは何度も止めようとするけれど止まらない、まさに狂気の行軍になってしまい、最後の最後までこの狂気の中目的地にまで到達してしまうわけです
ところで、主人公云々の話を書いてしまったので余談ですが
鉄華団は所詮ゲリラ組織みたいなものですので戦闘の所作も名誉もなにもありません、一方でギャラルホルン諸君はとても高潔で名誉を重んじ部下思いの人が多いわけです
ガエリオはアインと共に序盤からいいやつコンビでしたし、カルタ女史も少しばかりぶっ飛んだ演技はありましたが部下に慕われるいい上司でしたよね、そういえば元々アインがストーカーになるきっかけであったクランクさんもいいおじさんでした
一方で対峙した三日月さんのなんとゲスなことか、いや三日月は戦闘マシンみたいなものなのでブレないわけですが、高潔でも名誉を重んじるわけでもなくただ強さだけを思い求めてどこか抜けた感じなんですが、キラ・ヤマトさんみたいに無敵なわけでもないんです
戦えばバルバトスも三日月も傷付く、そういう当たり前のことをオルフェンズではしっかり描いてくれているので戦争の悲惨さを伝えるにはいい作品ですよね
そしていいヤツほど死んでいくという悲しい作品でもあります
主人公は普通の作品であればガエリオかアインだったでしょうにね、何かの目的を達成するために成長するということが物語の主題でしょうからアインが適切でしょうか?
アインは最後には人間であることをやめてガンダムになるわけですが、三日月も対決の中でこのままではダメだとバルバトスに一部感覚を持って行かれてしまうわけですが、一応クランクさんの仇討を果たしたいアインと、仲間を守りたい三日月という構図なので本来は三日月が主人公らしい戦いをしているのですが、今までの戦いっぷりを見ているとどっちもどっちの悪魔の戦いですよね
さて、真の主人公たるオルガが仕事を完結しました
出発する時には死んでもお前らは鉄華団だ!と威勢のいいことを言って狂気に包まれておりましたが、蒔苗さんを無事送り届けた瞬間から死ぬんじゃないぞと命令をします、命令に逆らって死んだやつはもう一度おれが殺すと叫ぶオルガ、蒔苗の代わりに演説をするクーデリア、どちらも物語当初の不良少年やらお嬢様とは違い立派にリーダーに成長した姿でしたよね
三日月もアイン相手に一度は死を覚悟したような素振りを見せますがオルガの声で一気に目が覚めてアインを倒します、当然強敵であったのでバルバトスはボロボロですし、三日月自身も阿頼耶識の根幹に触れるような戦い方をしたので右目と右腕の感覚をバルバトスに持っていかれたわけですが、三日月自身は飄々としていたりして
自分自身の姿を見て泣きそうなクーデリアを見て、この腕じゃ慰められないから泣くなよとか言える辺り、三日月もなかなかのヤツですね
そういえばアインさんが口走った「あの女も」みたいなセリフに反応して自分を犠牲にしても倒さなきゃと思ったんでしたね、どうしても守りたい女性があの時2人ともあの場所にいましたものね うふふ
ということでとりあえず折り返し地点なんでしょうけれどここまでの感想としては近年稀に見ぬいいガンダムでした
オルガとクーデリアのダブル主人公がとても素敵でしたし、アインもいいキャラでした
実際に全体をみると主人公が三日月とするならば相手はマクギリスでしょうし、最終決戦の頃には三日月さんひょっとするとアイン状態かも知れませんけど折り返し地点であっさり退場してしまった本来主人公っぽいガエリオさんやカルタ女史のポジションを対比としてオルガやクーデリアが担う可能性もあるわけで
ガエリオ→オルガ
カルタ→クーデリア
アイン→三日月
この作品を見るとそういうところまでしっかり仕込んでいるんじゃないかとワクワクさせられますよね
ということらしいので楽しみに待っているとしましょう!