ロードレーサーで琵琶湖を一周
ただいま無職中
だからというわけではないが、以前から行くと決めていた琵琶湖一周を思い出し、別に日曜日じゃなくても行けるのになと思いつつ出掛けた
ここ4年、毎年のように行っている琵琶湖
当初は琵琶湖サイクリングマップを片手にああでもないこうでもないと走っていたがさすがに道も覚えてしまう
米原駅に車を止めるとおれの愛車キャノンデールR700を降ろして走り始める
不思議なものだ、ペダルを踏むとさっきまでそれほど乗り気じゃなかった自分が一気にテンションがあがる
サークルKからずっと琵琶湖側へ走るとほどなくその雄姿を見ることができる
なんと大きな湖だろう、これを海と言われても別になんの違和感もないくらい広い
しばらくは琵琶湖沿いに走ることができる
だがこれほどまでに広いと風をさえぎる物もなく、時折強風に晒されることもしばしば
坂道のほとんどない琵琶湖周回コースにてこの風こそが自転車野郎唯一の敵になるのだ
日頃のトレーニングもロクにしていない体が悲鳴を上げる
琵琶湖を周回するからと言ってタイムを競うわけでもない
一日かけてじっくりゆっくり周回する、ペースとしてはLSDペースだ、だから本格的にトレーニングしている人にとっては笑われるかもしれない
それでも154kmの旅、36歳のおっさんにはそう簡単な旅でもない
北端から一気に南下する、途中琵琶湖沿いのリゾート施設や別荘が立ち並んでいる
まだまだ体は大丈夫、元気に友人たちと会話をしながら走る
時折見かけるカップルにちょっとだけうらやましさを感じながら余裕の走り、こっち側だと基本的に追い風みたいだ
ぼちぼち昼飯が欲しくなる、サイクルメーターを見ればまもなく80km、体内のグリコーゲンが空っぽになる頃
ここまで道の駅などでいのししコロッケとかしか食べていないからほぼ空っぽになっているっぽい
珍しくおなかが減った感覚を味わう
店を探すが駅前だというのにロクな店がない、ガリバーの人形なんて置いてないでちゃんとした店作ってくれと言いたい
とりあえず適当に入ったお店でトンカツ定食をいただいた
走行再開
昼飯を食う手前の風車村付近ではそこそこの速度が出ていたが昼飯後はそれほどペースも上がらず
逆に今年に入ってからいじったシートポジションがおれの尻と足を苦しめていた
途中止まって数回調整し、なんとか痛みを感じないポジションになった頃にはすっかり大橋が見えていた
ソフトクリームを食べながらじっくり休養し、そしてまた走り出す
ここまでくればあともう少し
大橋を渡りながら思い出す、昨年この後全然友人たちのペースについていけなかったんだなと
バテたのもあるけど、単純に補給ミス、体の中が空っぽになってしまって力が入らなくなってしまったのだった
今年はそういうことにならないようにと序盤からペースも押さえ気味だし、何よりポケットの中にはあんぱんとクリームパンを忍び込ませている
大橋を渡ってから激しい向かい風の中、友人の後ろに隠れてできるだけ風に体力を持っていかれないようにする
途中休憩している時にクリームパンを食べた、本当なら薄皮あんぱんがいいのだが売ってなかったんだよね
昨年転んだ場所も無事通過し、さああと30km程度と思ったところで強風が吹き荒れていた
琵琶湖周辺にはもっと防風林が必要なのではないか?
そう思わせるくらい吹き荒れる暴風と疲れでペースは上がらず、暴風のせいで会話も通じず、ただ1人黙々とペダルを踏むのみ
ヒルクライムとかこんな感じなのかな?
なんて思いながらも確かめるために出場する気はさらさらないんだけどさ
暴風が耳元を通り過ぎ、それが爆音となる
こうなるとまるで無音と同じ、まったくもって1人の世界にどっぷり浸かる
「もうやめようか」
「辛いから休もうか」
そんな甘い囁きのような気持ちが湧き出てくる
だがそれでも一歩一歩と踏み込んで前に進まなきゃこの旅は終わらない
米原まであと20km
正直うんざりしていた、この10kmでもかなりの体力を消耗していた
今年初めての100kmオーバー走行、いくらゆっくりなペースとはいえさすがに体にダメージがないわけでもない
足を揉み解すと仕方ないさとばかりに走り始めた
強い向かい風、風に逆らってどこへ行くのか?
漕いでも漕いでも進まないこの状況を、お坊さんならそれも人生の修行と笑っていえるのか?
昨年行ったお寺での座禅を思い出していた
無になるのが座禅の目的ならば今おれは無だ
体力も体内の栄養素も空っぽ、血中糖度が下がっているから余計なことも考えない、ただペダルを踏むことだけを忠実に実行していくだけの時間
周囲の風景に目をやる余裕もなくなり、ただ最低限自分の前後左右を確認し、自動車や障害物だけを認識することしかできなくなっている
なんのために走っているのか?
わかるわけもない
昨晩はエウレカセブンを見てちょっと感動していたんだ
早く寝なきゃ明日辛いだろうなと思いながらもついつい夜更かししてしまった
その影響が出ているわけじゃないのはわかっている、いくら早く寝ても、いくら体調万全でも、今年のトレーニング量ではそもそも完走すらできないと思っていた
それがここまでこれたならば後は走りきるのみ
走り始めた後悔もなく、走る喜びがあるわけでもなく、ただただペダルを回しながら多分無になれていたのだと思う
米原に入ってから、あと数キロで駅というところで琵琶湖にお別れを告げるように自転車を止めると、そのまま靴と靴下を脱ぎ、携帯を濡れないように置いて飛び込んだ
ちょっと気温が低かったから今年の琵琶湖は冷たかったが、しかし気持ちよかった
なんとか無事完走、何度も走っているコースだけに感動も何もないけど、でもうれしい
結局この走行で得られたものはなんだろう?
これからやるであろう仕事に対する意欲?負けない心?
そんなもんじゃないな、きっとただ無になるということ、考えすぎて不安になるのではなくただ無になること
それで金が稼げるのか?と心配になるのではなくただ無になること
「ねだるな、勝ち取れ
自宅に戻り続きを再生していたエウレカセブンで主人公が何度も言う
いいセリフであるとは思うがそれすらもうどうでもいい、何かに執着すれば不満を呼び、何かをしようと思えば不安に取り付かれる
ただただ疲れて、そしてただただ眠りについた
今年の琵琶湖を一言でいうなら無、ただただ空っぽになってかえってきました
でもなんだか心地いい琵琶湖でした
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