借りぐらしのアリエッティ

年末に放送していたのを録画しておいたままほったらかしにしていたので見てみた

なるほど、話題になっただけのことはあるが、しかし何かしっくりこない、面白くないわけではないが面白かったというわけでもない
映画を見た人が言っていた「何か起こりそうで結局起こらなかった」という評価はまさに適当であると感じた
なぜそう思うのか?ってのは非常に簡単な話なんだな

これ原作があるようで、ある意味原作の世界観を引っ張ってこれればよかったんだけど、どうやら舞台を日本に変えてしまったっぽい
そこら辺から少々ズレが生じたのかもしれない
そもそもこの家は金持ちであり、さらには昔から小人の存在を期待していて、その小人のために豪華な家まで用意している家であるという点
なのに小人たちは「人間に見つかったら引越しだ」という訳の分からない不文律を几帳面に守ろうとするから話が咬み合わないんだな
さらには小人に対する敵役であるはずのハルさんも、結局は小人が居てうれしかったというだけの存在なのだが、この人も不思議なもので小人が存在すると証明するにせよ、どっちみちこの家の住人は小人の存在を信じていて、さらには好意的なわけだから、別にムリに証明してみせる必要なんてないのにそこを対立軸にしてしまったこと
これでは盛り上がらん
せめてハルさんが「小人なんてこの世にいちゃいけないから滅ぼしてやる!」くらいの悪役ならいいんだけどなぁ

さて、小人ですが、「狩り」と「借り」を同意義に使用していたりして、この辺りは面白いなと感じさせる要素です
彼らは作中にもそれとなく出てくるネズミやゴキブリなどの対比対象と違い、「かり」をして生計を立てているわけです
そういう意味では人間との対立軸の1つになるでしょう
小人にしてみたら冒頭アリエッティが庭で「狩り」の結果?持ってきた葉っぱ類と、その後「借り」にいく角砂糖と、同じように「そこにあるモノを使って生計を立てている」だけの話なのですから
しかし人間にしてみたらそれは「盗まれた」モノであるわけで、そこに対立軸が持ってこれるはずなのに、主人公の男の子にしてみたらこんだけ立派な屋敷に住んでいる金持ちなので角砂糖1個どころか、自分の先祖が作った豪華な小人屋敷すらくれてやっても痛くも痒くもないわけで、対立軸の構築に完全に失敗してしまっております
非常に残念ですね

結局なんで引っ越さなきゃいけないのか?ということろがさっぱりわからん
少年とアリエッティの絡みもあんまり濃厚ではなく、っていうかそもそも少年がキッチンをプレゼントしようとさえしなければ小人たちは引っ越す理由すらなかったわけで、このバカ息子が爽やかな顔して迷惑かけたって話じゃないかと
原作がどうかは知らないが、アリエッティ達が「借り」た何かが問題になってハルさんが屋敷を追い出されそうになって、少年がハルさんかばうために小人の存在を明らかにして、みたいな流れでもよかったんじゃないか?
その上で小人殲滅作戦に心が痛んで少年が逃がすみたいな

そもそもこれ、一寸法師を原作にした方がよかったように思えるんだ
生まれてきたけどオトナになりきれずに追い出されるように都に奉公にでかけ、そこの娘に恋をして一人前の男になりたいと鬼退治をして打ち出の小槌でオトナになる、みたいなとっても面白い成長物語にできたのにね
まあ多分、ヒキコモリの少年が外に出るきっかけになるという定番の設定を使いたかったのだろうが、対立軸もないし、舞台は結局のところあの屋敷内だけだし、結局キャラクターに意図が感じられないので設定の面白さを生かしきれずに終わった感じがあるよね
それとは別に、アリエッティ自身が主人公の少年に興味を持つ年頃なのもわかるが、スパローなる同種族の少年の方にもっと興味津々だったのは面白い表現だ
好奇心旺盛なアリエッティは屋敷内だけじゃなく、もっと広い世界を見てみたい、そのもっと広い世界の証明であり知っているスパローはとても興味をそそる対象だったに違いない
その辺りももっと深く描ければよかったのにね、主人公の少年との絡みも浅く、スパローとの絡みも浅すぎてもったいなかった

面白くなる要素は満載だったのに、残念ながらすっきり終わっちゃった
そんな作品に仕上がっておりました
まあでも見ていて面白くないわけではないので時間のある時にでも見てみてはいかがでしょうか? みたいな