魔法少女まどか☆マギカ なるほどね

彼女がえらくハマってて、一度見たほうがいいだの、DVD借りて見ろだの、さやかちゃんはシェリル・ノームを超えているだの言い出して
最後にはDVD手渡されて見るようにとの宿題をいただいてしまいましたので見てみました

ネット上ではかなりの高評価であるこの作品、近頃のアニメ作品等はかなり作りこまれているので見る時に基礎教養が必要になりますが、さらに近い時期の作品などに多分に影響され、そのアンチテーゼ的に本歌取りをしたりしているのでそれらの基礎教養もあるとさらに楽しめるわけです
今回の作品も幾種類もの最近のアニメ作品の表層もしくは内部をオマージュしながら、音楽が重厚だったのと魔女空間で出てくる文字、あれはドイツ文字かな?多分欧州辺りの魔女に関する昔話などを持ってきて構成されているのでしょう
萌え絵とは対照的に胸に突き刺すような負の感情などの表現、これらは欧州文学の影響が多分にあると思われるのです

個人的に∀ガンダムがアニメーションの最高傑作と言うのも、日本の古典をベースに物語が組み立てられておりまして、日本の古典というのは
「幸せに暮らしたとさ」
で終わるなんとも言えない、ハッピーエンドとも違うほんわかした終わり方が特徴で、そういう見事なエンディングを迎えてくれたことに感動すら覚えているのですが、西洋ベースとなるとそういうエンディングはなさそうだと思って拝見させていただきました

1話からしてまずDVD入れ間違えたか?と3回くらい確認するくらいにいきなりクライマックスシーン
「夢オチか」から始まり、転校生としてその時夢に出てきた女の子が転校してきて渡り廊下で注意、さらには魔法少女として契約する不思議動物と遭遇するわけですが
この時点でこのほむらちゃんなる女の子がまどかを絶対に魔女にしたくないこと、また戦場ヶ原ひたぎでツンデレキャラには慣れているおれからしてこれはほむらちゃんはまどかちゃんに好意があるからそういうことをやっているということが理解できるわけです
と、同時にあまりにも好意的で優しすぎるマミちゃん、こいつが実は悪役で。。。なんて展開があったら楽しいなと思うんだけど、本当にいい子で残念
病院で結界を見つけて助けに行く途中、わかりやすい死亡フラグバシバシ立ててくれて、多分敵ではないだろうほむらちゃんまで封じ込めちゃって
ってかその瞬間はあっけなかった

おれ的にはここがピーク

結果はともかく、魔法少女なんていう夢見る少女の幻想を見事に打ち砕いてくれたマミちゃんのおかげでほむらちゃんは一安心だったことだろう
しかしさやかちゃんが魔の手にかかるのだ!
多分この辺りからうちの彼女がドンハマりしていく展開なのが笑える
恋する幼馴染をなんとかしてあげたいと自らを犠牲にしても助けてあげたいって思ってしまったらしい、正直毎日が交渉事で疲れている社会人にとってこんな造作もない選択をなぜできない?と
幼馴染にはバイオリンを諦めてもらった方がいいのに、なぜお前が勝手に犠牲になるんだw
結果、魔女にたぶらかされて危うく死ぬ所だった友人の仁美ちゃんとまどかちゃんを助けることができるんだけど、結局この時助けた仁美ちゃんが自らの命を削って助けたはずの幼馴染にラブ注入、しかも自分は既に死んでいるとばかりにゾンビ状態の魔法少女になっちまってる
「あの時仁美を助けなければよかった。」
見事です!
これ元ネタなんだろう?結構西洋の古典にありそうなシチュエーションなんだけど、こういうドロドロは西洋の昔話か中国の宗文学に限るが、ドロドロ感がやっぱり西洋の方が上なんだよね、中国の古典だとそういうドロドロしたこともさらっと描写しちゃってるから

話がそれた

さやかちゃんは偉い
魔法少女の正体を暴く役を見事に一手に引き受けて、さらに見ている女性(おばさま中心?)を泣かせて夢中にさせるなんて!
魔法少女になるのには体から魂を引っこ抜いて宝石状のモノにしてしまう行為、それだけで恋を諦めるくらいにショックな出来事なんだけど、さらに自分たちが狩る対象であるはずの魔女というのが実は自分たちの成れの果てであることまで見事に立証してしまうのだ!
そして見事に魔女になったさやかちゃんは自分の世界で愛しい上条くんのコンサート会場にて憎ったらしい恋敵の仁美ちゃんオマージュの何かをバッタバッタと斬り殺しまくる簡単なお仕事に励んでいたりする
当初、殺しあうくらいにぶつかり合っていた杏子ちゃんがなんでさやかちゃんと心中しなきゃいけなかったのか、途中から自分と同じように「人のために良かれ」と思って魔法少女化してしまったことに対する同情というか共感というか、そういうのが芽生えたっぽくはあったのだが、一緒に死ぬまでに共感していたとは驚きだ

で、残りはほむらちゃんとまどかちゃん
何度もあの愛くるしい顔してドギツイユダヤ商人役をやっているキューベーさんにたぶらかされそうになりながらも寸前でほむらちゃんに救われてきたまどかちゃんだが、ここで遂にほむらちゃんが抱きついて真相を暴露する!
ってか営業ベタのユダヤ商人役であるキューベーさんも散々ネタバレしていてせっかくテンポよくサクサク進んでいた話を小難しくするんじゃない!

宇宙を破壊するくらいの力を持った脳天気少女とタイムスリップ?どこかで見たシチュエーションだが中身は似ても似つかないのでほっとくとしよう

あとは期待されるオチなのだが
個人的には1話冒頭に戻って「夢オチか」でエンドレスでも良かったんだけどそうはいかないみたいです、決着付けちゃうみたい
今までただの役立たずキャラだったまどかちゃん、ほむらちゃんの回想シーンで出てくる魔法少女まどかちゃんは凛々しかったけど、本当に役立たずで使い物にならなかったまどかちゃんが遂に決意するわけです
インチキユダヤ商人キューベーさんも真っ青なトンデモ要求をして拍手喝采!みたいな、まるでベニスの商人を見ているかのような、とてもわかりにくいオチでした
一見正しそうに理路整然と屁理屈をこねていたキューベーさんですが、しゃべりすぎる営業マンは逆手に取られるという原理原則通り、やっぱりやらかしちゃってました
萌えキャラ絵に騙されすぎですよ、キューベーさん!まどかちゃん、意外と頭いいようで、すべての魔女が生まれる前に消し去りたいとお願いするわけです
なるほど、ほむらちゃんが何度も何度も繰り返し同じことをしてくれたおかげでただの魔法少女ではなく宇宙をも作り変えるくらいに強大になっていたまどかちゃんならできるそうです、キューベーさん達の魔法少女永久機関装置も見事に思惑が外れてしまうわけです
しかし契約で縛られてしまう悲しいユダヤ商人、おっと、キューベーさんはそれを実行するしかないわけです
と、いうことで全ての魔法少女は魔女になる前にまどかちゃんが回収して回って、その壮大なエネルギー体となったまどかちゃんはどこぞに溶け込んで行ってしまうわけです

ってか、もう一度見直すともっと違う所が見えてくるんだろうが、まあ面白かったと思う

ざっと拝見させていただいた限り、いくつかの最近のアニメと西洋の古典をベースに物語を練り上げてうまく演出しているなと感じました
やっぱりアニメ製作のレベル高いなって思わせる作品であったと思います
と、同時に途中はテンポよくサクサク進んでその都度完結してきたのに、最後はやはりどうしてもオチに向かって説明しておかねばならない部分があります、まるでシェイクスピアを読むがごとく倫理観やら屁理屈が散々並んで、最後はその屁理屈を手玉に取っての円満解決! だったはずが、やっぱり後味の悪さまでシェイクスピアかw
欲しいものを手に入れるためには何かを犠牲にしろという、そういう話だったかと思ったんだが、結局ほむらちゃんはまどかちゃんを失って帳尻が合ったということでいいんだろうか?
できれば同じく等価交換の原則を元に話を繰り広げていた鋼の錬金術師みたいにハッピーエンドで終わって欲しかったと思うのだが、西洋文学ベースではこういうものなのだろう

最近あまりテレビなどを見ていないので、この作品がネット上以外でどれくらいの影響力を与えているのかは知らないが、本当にこんな基礎教養のレベルを問われるような作品を、なんであんな萌え絵に載せられるんだw って思う
だがしかし、それが若者の心を惹いて、彼らが元ネタ探しに必死になり、そこで必要とする基礎教養を身につけるのであれば面白くて感情移入できて勉強にもなる、とてもいい教材だと思うわけだ
だからこそ大人だからと萌え絵を毛嫌いしないで、作品をちゃんと評価しなければいけないと思う
わかっちゃいるが、しかしけいおん!なるものはどうしても受け付けないんです ごめんね