おおかみこどもの雨と雪 を見て感動

まだ公開中の映画のネタバレを書くほど子供でもないのでまず冒頭に一言だけ
細田守監督と言えばやっぱりサマーウォーズなんだな、そしてこの映画公開直前にそのサマーウォーズをTV放映してその枠で宣伝をしたわけだ
サマーウォーズに関しては2年ほど前に書いたレビューがあるのでそちらを参照していただくとして、とにかくサマーウォーズは非常に楽しいSFモノであったと思ってくれればいい、だから細田守監督作品に期待するのは時をかける少女やサマーウォーズのような冒険活劇をイメージした人が多いのだと思う
おおかみこどもの雨と雪はお伽話であり、さらに言えば母と子供の物語である
おおかみ人間という設定を生かして笑わしてもらえるシーンがいくつか用意されてはいるが、人間ドラマなので主筋でない部分はカットせざるを得ないので基本的には地味な人間ドラマで進行する
「夏休みアニメだよ!」
と大々的に吹聴し、サマーウォーズを見させられた後ならばああいうハデハデしい娯楽活劇を期待して見に行くだろうからそのギャップがこの作品の評価を難しくさせるところなんだろうね

母親視点でおおかみ人間のお父さんと出会うところから始まる
物語の冒頭って本当に難しく、特にこういう特異な世界観を植え付けなきゃいけない2時間作品となると本当に難しい
説明臭くなったら視聴者は白けるし、かといって説明ないままに突き進むと疑問符だらけで物語に集中してもらえないんだ
「実はおおかみなんだよ。」と彼がカミングアウトしてそれを受け入れて、その次のシーンでいきなりヤッちゃってるっていう描き方は個人的にはものすごく好きなのだが、隣の席のお姉さんなどは「そこで避妊しとけばよかったのに。」というご意見もあったりして
おれもTwitterやりながらテレビで見てたらそういうツッコミ入れてまわるところだけどね

さて、物語は母と子供二人の成長期であります
おおかみだから、という大前提を元に笑えたり辛かったりというエピソードを繰り返しますが、これが不思議とおおかみでなくても起こりうる問題をそれとなく描いて置いて、それがおおかみだからということで孤立する母親像から描かれるのです
えーっと、あんまり内容を細かく書いちゃうとネタバレになるといけなんだけど、新米ママさんならだれもが困るだろう事柄だとか、一人で子供を育てている母親ならだれもが遭遇するであろう苦労を紹介しながら、それでも子供がおおかみだからとだれにも相談できずに都会で孤立する母親像が描かれるのです
冒頭の引きずり込みが非常に上手なので視聴者からしてみたら「ああ、子供がおおかみだからね。」という母親と同じような孤立視点に立たされるわけです
うまいな、細田守監督!と思わず納得しちゃいました

このおおかみ視点、実はうまく使い分けられていて、子供たちにも当てはまるんです
母親が宮崎あおい声で「人間として育てたらいいのか、おおかみとして育てたらいいのか。」迷っておりましたが、どっちでも選択できるようにと連れて行った環境で、どっちでもいいように冒頭は育てられております
人間社会に参加したいと姉の雪は駄々こねて学校へ行きたいとせがみ、学校に行ってはみたもののあまり馴染めず、逆に近所の施設で保護されている狼や山の風景に惹かれる弟の雨
性別も環境も別々ながら、とくにおおかみとして描くでなく普通の子供が普通に感じるであろう事柄をそのまま描いているのでここまでくると「あれ?おおかみだったんだっけ?」と思うこともしばしば
逆にそれが子供からしてみると生々しくて嫌だと感じたり、宮崎アニメみたいなファンタジーの部分がないので盛り上がるシーンがなかったりして昼ドラを見ているようで飽きちゃうのかもしれませんね
尺の問題もあるので難しいですが、雪の上を駆けまわったり、先生の後をついてまわるシーンでもっといろんな動物の生態などがもっと描けていれば子供たち目線でみても楽しい作品になったのかも?とか思っちゃいます

いろんな評価のある作品みたいですが、結局はどっちの生き方をしても早々に親元を離れて大人になっていきましたっていうオチが理解できた人がいるかどうかかな?
映画館だとわかりにくいかもしれませんが、ブルーレイで発売されて何度か見てみればわかりやすい作品でしたね