秒速5センチメートル を見て
別に暇でしょうがないわけではないのだが、特番尽くしのテレビにうんざりしてぐぐっていたところ秒速5センチメートルというのが評判がよさげだったので見てみた
1話、2話、3話という構成が1時間ちょっとで収まっている短い作品
1話で主人公貴樹とヒロイン明里のちょっとせつない物語を展開
離れ離れになった二人がさらに遠くに行ってしまうということで苦労しながら再開するというお話
先に明里が転校するところがミソ?
本当は貴樹と一緒の中学に行きたくて子供ながらにおばさんところから通うなどなど手を尽くしてみたけれども願い叶わず引っ越してしまった明里はこの年代の女の子らしく男の子よりちょっと大人なわけだよね
引っ越して半年後、明里から貴樹に手紙が届いた、ってかこの女中学1年生にしてとっても男性キラーだと思うのが
「私のこと覚えていますか?」
こりゃ男ったらしだなw
そこに食いついたのかどうか、明里が引っ越さなきゃならないと涙の電話を掛けてきたときに何もしてやれなかったことの後悔を晴らす為ってのと、親の都合で今度は貴樹が鹿児島に引っ越すことが決定していて自分自身が不安定な気持ちになっていたことも相まってか貴樹は栃木の明里に会いに行く
雪が降って電車のダイヤは乱れまくって、まだ携帯のない時代だから待ち合わせが困難な中、やっとたどり着いたのは待ち合わせの時間から4時間が過ぎた頃
それでも待っていてくれた明里と涙の再開、まだ雪降る桜の木の下でキスをして っていう
男目線で描かれる、っていうか男の初恋の記憶的な何かがここにあるわけで、ここで視聴者たるおっさん諸君がグイグイ食いこまされるわけだがこれは罠だなとピンとくるわけだ
この明里、なかなかにやり手だぜってシグナルがビンビン感じられる
最後に始発で帰る貴樹に対して
「この先も大丈夫だと思う、絶対」
と力強く押し出している
これはつまりキスしたとか、一緒に寝泊りした性的な表現にデキたな、この二人はという簡単な恋愛物語ではないことを示唆している
東京と栃木でも中学生に取っては絶望的な距離、明里と貴樹は手紙でしかやりとりのできない距離であったわけだが、さらに貴樹は遠く想像もつかない鹿児島に行くことになるわけだ
貴樹目線からはとんでもなく不安で仕方ない、そんな時に一足先にその不安と立ち向かった明里からの手紙、いろんな感情が想像できるが貴樹は好きだという気持ちよりも明里にすがりたかったのではないか?と想像してみると話がわかりやすい
あの時わからなかった明里の心情が理解できたからこそあの時自分にすがりつきたかっただろう明里に何もしてあげられなかったことを謝りたいと思ったのかどうか、まあ言い訳くらいはしたかったのかもしれない
明里に渡そうとした手紙が途中で飛んで行ってしまったので真相はわからぬまま
1話内で実は物語は完結していると思うわけだ
で、結局行き着いた結論が立派な大人になりたい的なありきたりな結論だったわけだな
2話に高校三年生を持ってきたわけだ
中二で引っ越して結局高校まで鹿児島で過ごしている
鹿児島ではモテモテ、というわけではないが花苗とのエピソードがあるわけだ、つまり明里とは決別していることをエピローグ的に描いている
しかし夢に出てくる女性と、あれは宇宙を現しているのだろうか?引っ越した場所は種子島だろうし、所々にロケットの描写があるので父親がそういう関連の仕事に携わっていて自分も大人になったら宇宙関連事業に携わりたいと思っているのかどうか
花苗ちゃんは貴樹に惹かれるのだが、どこに惹かれているのか、まあ高校生らしい青春の恋ってヤツだから理由もクソもないわけだが、それがわからないまま、また人生に悩んだままでいる自分とは対照的に、勝手に頭の中で理想化した立派に将来を見据えている貴樹に惚れていたのだろうか?
この2話目は1話のような突拍子もない仕掛けがあるのかと思っていたけど、途中までは普通の少女漫画的に描いているので理解しやすいかもしれない
女の子視点で男の子をまさに神格化して物語が進むわけだけど、結局の所は立派な大人にならなきゃと若くして決意し鹿児島入りした貴樹の大人びた部分にただ憧れているだけの田舎少女的にしか見えないんだな
表現方法の違いは明らかで、雪に阻まれて涙ぐんでまで明里に会いに行った1話の貴樹とはえらく違って優等生でやさしい貴樹くんが描かれている、これはもう花苗視点で美化された貴樹なわけだな
序盤、中盤と貴樹も花苗を無碍に扱っていないので好意はありそうだけど急展開するのが終盤に向けて花苗が貴樹も悩んでいることを知って同列だと認めた時点からだと思う
誰宛かわからないメールを書いては送れない貴樹くん、内容があの夢のこと、夢の中で自分の将来への不安が表現されているのだろうか?就職、結婚と見ればやはり種子島にいる分就職に直結するであろう宇宙関連事業、そして結婚は当初だれだかわからない女性と一緒だった、海辺であるということと花苗がサーフィンしているということで当初の相手は花苗想定だったのかも知れないが最後の夢ではしっかり明里の顔が出てきていた
つまりメールを出す相手=結婚相手という表現で、途中あのメールが私宛だったらなみたいなことを花苗に言わせておいて、でも夢で見たのは明里だという表現はちょっと酷いな
まあ大学進学の為に鹿児島から東京へ行くという少年時代を思い出させる転機があるのもあって、そういう別れ際で明里→貴樹と繋いできたバトンを元にすれば花苗が明里と同じように貴樹を送り出してあげられるかどうかが1話との対比
つまり好意はあるし相手の好意も理解しているのだが貴樹は過去の経験からもあと数ヶ月でお別れしなきゃいけないという状況は理解しているわけで、だからこそ花苗についつい明里みたいな部分を求めていたのではないか?と推測してしまうんだ
結局花苗は告白するつもりが「やさしくしないで」と泣きだしたわけだが、明里の「大丈夫だと思う」と送り出したような言葉を期待していたであろう貴樹はこの花苗の涙を見てどう思ったんだろうね?
で、結果が夢の中の女性は明里になるわけだ
3話になるともう本当にエピローグ的な描かれ方しかしていないのでさっぱりわからん
1話冒頭と同じ街だと思う、あれから10数年経過しているので街並みは変わるが同じ場所の光景が映しだされている
所々映像を見るに、明里ではない女性と3年付き合っていたが1000回のメールをやりとりしても1センチも近付けなかったと評されているし、必死に立派な大人になろうとしたけど擦り切れてしまい弱り切った貴樹の姿が描かれている
会社をやめて個人事業主として生計を立てているみたいな
線路で女性とすれ違うところから回想シーン、山崎まさよしのプロモーションビデオ的になるわけだw
明里ちゃんは結婚が決まっていたみたいであの栃木の片田舎から電車に乗るところを両親が送り出してくれるシーン
貴樹と一緒になるわけではないということは、かつてこの駅で渡しそびれてしまった手紙を見て貴樹を思い出していることで理解できる
大人になってそれぞれにそれぞれの人生を歩みながらもどこか心の原点が初恋に求められるような、この物語が人気あるのはきっとそういうだれにでもありそうな淡い思い出話だからなのかもしれないね
コンビニで立ち読みをしている雑誌、これは2話で見ていた宇宙雑誌かな?貴樹君の仕事をしている姿をみるとおれと同業種っぽいんだが、確かにこの業界はあの若さで3年もやってると擦り切れるよねw
すれ違った女性を今ならと思って振り返ってみるが、しかし期待した通りというかはずれというか、相手の女性は電車が走り去った後跡形もなくいなくなっている
結局2話で不明瞭だった就職や結婚というところにまだ貴樹は迷っているということだが、しかし最後の最後に諦めてないぞと描写するわけだ
総論として、1時間ちょっとは短いなw
でも映像作品としてこれだけの分量を書かせるくらい行間を読ませるだけの演出はニクい、なるほど名作と呼ばれるわけだと思った
ざっと1時間見て、さらにサウナで2時間ほどうだうだしてから書いているのでもっといろんな描写があったかも知れないけどざっとこんなものではないかな?
1話のところでも書いたけど、書きたいことは1話で結構書かれていると思うんだけど、2話、3話と書き重ねることで深みが増していると思うわけで
花苗が「やさしくしないで」と泣いた瞬間、ロケットが発射されるシーンなどは本当に秀逸だね
貴樹君は東京の大学に行って3年働いて仕事をやめただけだから25歳か、職業はプログラマーで個人事業主で生計を建てようとしているとろこなわけだ
不安定だよね
3話ともに共通するのは人生の転換期だということ、転換期が無駄に多いおれに取って共感できるのはやっぱり苦しい時はついつい初恋の相手とか思い出しちゃうんだよねw
今はもう記憶すらないんだけど、まだ記憶新しい10代とか20代前半ってどうしてもね
貴樹は別に明里本人と結ばれたいと思っているわけではないことが3話で描かれているわけだ、というか高校生になった頃にはすっかり明里と文通やメールすらしていない様子だしね、大雪の日でしっかりけじめを付けてその件は振りきれているのだろう、しかし人生の転換期に近くにいる女性をどうしても明里と比較してしまうんだよね
1話評で書いた通り、あの時点での明里は自分より一歩進んでいたし年代的にも大人びていたわけで、そういう意味であの瞬間の明里に理想を求めているだけのマザコンみたいなもんだw
だから大学生になってから連絡を取り合ってもよかったであろう二人は別々の相手を選んでいたわけで、単純に男ってヤツは困った時は美化した初恋の女性を思い出してしばらく引きこもっちゃうぞってことを素晴らしい映像で現している作品なんだろうね
作品の演出がとても幅の取れる懐の深い演出なので、どこか自分の思い出にひっかかる部分があるとグイグイのめり込むし、テーマ自体が男ならだれでも1度は思ったことだろうから人気があるのがよくわかる作品でした
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません